鷹栖養護学校について

 本校は、養護学校義務制施行の昭和54年4月に北海道の上川郡鷹栖町に開校した「特別支援学校」で、知的な障がいや情緒に障がいのある児童生徒が在籍している。平成10年度には高等部が設置され、平成11年に新校舎が完成し、渡り廊下で結ばれている。


(1) 地域の概要
 鷹栖町は、北海道第2位の都市、旭川市の隣に位置し、道内でも有数の米生産地帯であり、学校の周りにも広々とした田園がある。鷹栖町は、お米をはじめトマトジュース「オオカミの桃」、建築物では、「メロディー橋」「メロディーホール」「サンホールはぴねす」、観光では、「田んぼアート」「パレットヒルズ」、等が有名である。

 鷹栖町は、昭和42年以来「健康と福祉の町づくり」の理念に基づく福祉行政を積極的に推進し、昭和62年度には、「ノーマライゼーションエリア推進事業」に取り組み、これによりノーマライゼーション理念の普及と社会福祉活動の充実を願い、「福祉の町づくり」を強力に推進してきた。町主催の様々な行事に児童生徒や教職員が参加するなどして、町民との交流を図っている。本校の開校以来、鷹栖町役場を中心として強力な支援態勢を敷いている。

 就学に際しては、教育委員会を始め保健福祉課とも関わり、平成9年からは、教育相談事業で保健師や母子通園センター(鷹栖町は旭川市に含まれる)と連携を図るようになってきている。

 中学部の地域体験作業では、役場や町内会と連携して実習を行っており、総務課が窓口となり調整していただいている。役場の青年部は、寄宿舎祭(おさらっぺ祭)に開校時からボランティア活動の一環として関わっていただいたり、婦人ボランティアには、地域体験作業後の炊事に協力いただいたりしている。これらの役場の取組は、町内全戸に配布される鷹栖町広報「たかす」で詳しく取り上げられ、本校を町民に理解してもらう上で大きな力となっている。

 また、町民全体が「お年寄りや障がいのある人々」に理解があり、ボランティア活動も社会福祉協議会を中心に組織的な活動が展開され、福祉的な町の行事を推進する立場から本校にも積極的に関わっている。地域住民は、本校の教育活動にも協力的で、町内の学校と同じように対応している。鷹栖町北野地区には、東西の町内会があり、本校の学習と大きなつながりがある。北野地区コミュニティセンターの活動として、春と秋に「歩こう会」があり、小・中学校の子ども達と自然に触れ合う機会となっている。また、北野地区文化祭には、高等部の作業製品の販売、小・中学部作品展示等、地域の人々と展示を行っている。

 町内には、小学校2校、中学校1校、高等学校1校があり、小学校1校を除いて交流を行っている。特に、北野小学校とは、開校以来「交流教育」(交流及び共同学習)を続け成果をあげている。また、平成25年度から鷹栖高等学校との交流及び共同学習も開始され、貴重な機会となっている。

 本校周辺は、自然環境、社会環境にも恵まれている。遠くに大雪山を望み、すぐ近くにはオサラッペ川が流れている。学校のすぐ近くに幹線道路が走り、旭川方面への路線バスが運行されている。また、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、郵便局、公共のプール、公園等も多くある。

 本校では、「地域に根ざした教育」として、地域の環境を教室・教材化した体験学習を多く取り入れている。近くの公園や町のプールの利用はもとより、オサラッペ川の堤防や町内でのウォーキング、ランニング、スキー学習等、多くの活動が地域の環境を利用して展開されている。

 高等部では、北野公園の花壇の整備作業を西町内会と連携して行っている。現場実習においては、地域の施設(B&G等)の清掃活動、中学部では、秋に地域体験作業学習で2週間リサイクル品回収、町内公共施設駐車場のライン引き、機会があれば公園、保育所の柵や遊具のペンキ塗り等が行われ、小学部では児童の実態に応じ、町内の清掃活動等、直接学校近隣の人たちと触れ合う機会が多く見られる。

 このように、地域の環境を利用するだけでなく、地域に役立つ活動を行うなど、これらの環境を最大限活用して学習活動を行っている。


(2) 今後に向けた展望と課題
 本校は、地域が、子どもたちの学習する場、誰もがよりよく生活できる場として、その環境を整えるために鷹栖町、旭川市を中心とした地域と深く結び付いている。これらは一朝一夕に成り立ったものではなく、地域を教材化しようとしてきた本校の地道で継続した取組の成果である。この地域とのつながりを基盤としつつ、特別支援教育にも連携の動きが求められている。以下に、その動きを述べる。

ア 個別の教育支援計画の作成及び支援会議の開催
 特別支援教育の一環として個別の教育支援計画を推進する。平成17年度から、児童生徒全員の個別の教育支援計画を作成している。個別の教育支援計画を作成し、支援会議等で関係機関と連携を図りながら推進している。今後、推進していく中で検討改善を重ねながら保護者・関係機関との支援会議を実施する。

イ 就学前機関との連携
 各地域の就学相談への協力、上川管内特別支援教育ネットワークによる相談等の就学前の早期療育への支援を進めており、本校では支援部が対応している。

 各市町村教育委員会の就学支援に関わる協力、教育相談や学校見学への対応など、その情報の管理や伝達・発信についても組織的な取組と校内体制の確立が図られてきている。

ウ 地域との連携
 開校からの地域、とりわけ鷹栖町、旭川市との繫がりは、長年にわたり強い関係が構築されており、その意義やこれまでの歴史を踏まえさらに発展させていくことを意識しなければならない。

 また、広い校区を抱える本校にあっては、各市町村との連携を組織的に深めていくことが求められている。児童生徒が、家庭、寄宿舎、あるいは地域社会においてどのように生活しているのか、自立支援法及び福祉サービスの動向が社会状況の変化により大きく変化しようとする中、保護者のニーズや地域の特性を把握し、より望ましい地域での生活を一人一人に応じて考えていく必要がある。

 学校として、子ども達を地域で支えていく時代を見据えて、児童生徒の居住地域における総合的な支援に向けたネットワークづくりを展開し、地域資源や地域行事等の情報の収集、学校からの発信、早期の教育相談や地域の子ども達の相談、生涯にわたる地域との連携等、多方面にわたる連携を構築していく必要がある。

 令和5年度からは、コミュニティ・スクールを導入している。これまでも、地域とのつながりを大切にし、本校が果たすべき役割を認識しながら、障がいのある児童生徒の自立と社会参加に向け、学校運営をしてきたが、今後は、「地域とつながる学校」から「地域とともにある学校」への転換を図ることが求められており、学校と地域住民等が力を合わせて学校の運営に取り組むことが可能となる「学校運営協議会」を設置し、よりよい学校づくりを進めていく。

エ 医療との連携
 一人一人の実態を把握し教育活動を実践していくために、個人の医療面、身体面の情報を欠かすことはできない。過去には保護者を通しての情報収集が多かったが、医療とのリアルタイムでの連携を築くためには、より確かな日常的な連携が必要である。広い校区に医療機関が点在していることによる困難さはあるが、子どもに関わる教育・医療・福祉というそれぞれの分野がより密接に連携していくことは、子どもの成長発達に果たす役割は大きいと考える。

オ 学校間の連携
 幼稚園や保育園のほか、小・中学校・高等学校、特別支援学校等との連携が図られている。それらをより深め、学校全体のものにするために学校公開日を設けている。

 また、平成19年度から地域の学校の要請を受け教育相談のために訪問する特別支援教育パートナー・ティーチャー派遣事業を行っている。近隣の特別支援学校間で分担し相談に当たっているが、本校は推進校としての役割を担っている。

 特別支援学校7校では、地域の特別支援教育の推進を図るため「上川管内特別支援教育ネットワーク」(たいせつネット)を運営し、管内の特別支援教育の推進に取り組んでいる。